ラブリーチェーンしみ抜きブログへようこそ。管理者の讃岐です。
今日はちょっと辛辣なことを書きます。
今日のシミはお客様曰く『バッグの本革が溶けて移ったシミ』だそうです。
正直、『本革』という所、疑ってます。本革はそう簡単に溶けるものじゃありません。しかし合皮(フェイクレザー)の銀面(スウェードみたいな起毛調でなく、表面がテカテカしている皮革)仕様は、主にポリウレタン樹脂が使われており、これが製造後3年程度で分解が始まり、溶けてきます。正確に難しく言うと『加水分解』と言って空気中の水分と化学反応を起こして、高分子化合物(ポリマー)から原料の油(モノマー)に戻ろうとする分解反応です。
ちなみに、ポリウレタン入りの服って、作る側にも着る側にも便利なんですよ。糸にして編みこめば適度な伸縮があって着用しやすい『ストレッチ素材』になりますし、ポケットや衿、前立て、ファスナーの取っ手を合皮にするだけでもパッと見の高級感が上がります。革ジャンなども本革なら数万〜数十万円するところが、ポリウレタンの合皮なら見栄えは大差なく1万円程度で購入できます。安くて見栄えや機能性も良い、一見『消費者のミカタ』的な素材です。しかしそれは大量消費大量廃棄の使い捨て文化の中でのこと。
【製造後3年程度で分解が始まる】=長持ちしないという重大な事実が消費者にあまり認知されていないのが実情です。アパレル側も『3年で駄目になりますよー』と大々的には謳えないので、洗濯表示タグの所に申し訳程度に一文記載するのみ。正直我々洗う側にとって合皮はいつ剥がれたり溶けたりするかわからない時限爆弾のようなものです。
今回は『バッグから移った』とのことですが、バッグなどは洗濯表示タグがない(洗濯はしない前提である)ことも多く、お客様からすれば『なんで??』となるのも無理はありません。
一応落とせることは落とせるのですが、残念ながら一箇所ずつの処置・なおかつ今回のお洋服素材が強い処理で色が薄くなってしまうようなので、かなりしみ抜き代はお高くついてしまいます。
合皮製品を後生大事に使い続けるのは正直無理です。今回のように他のお洋服にまで悪影響を与えることもあります。
3年以上経過した合皮はまだ劣化が見られなければ儲けモノ程度に考えていただければと思います。